12月 日記
●開会式での入場行進=12月27日、近鉄花園ラグビー場で撮影
●ラグビー応援
ラグビーシーズンたけなわである。12月27日から全国高校ラグビーが近鉄花園ラグビー場ではじまった。女房の母校,熊本県立荒尾高校が3回目の出場をはたし、花園へやってきた。普通の県立高校が出場してきたものだと、一昨年の2回目のときは、運がよかったのだろうと思っていた。
今回、3回目となると、運ではなくかなり強いチームだと思わざるをえない。今年のはじめの県大会では初戦敗退するなど、あきらめていた。ところが、秋の予選では準決勝でシード校を接戦で破り、勝ちあがってきた。
2回目の出場から監督、選手と女房の交流がはじまり、激励を続けてきた。それだけに出場が決まってからは、自分のことのように喜んだ。開会4、5日前にチームを引率して大阪についた監督から女房に電話が入り、再会できることを伝えてきた。
さっそく、ラグビー場の近くにある春日神社に祈願に出かけた。ここには木彫りのラグビー球が奉納され、多くのチームが祈願に訪れている。そしてラグビー場の正面近くにある和菓子の店・絹屋で「花ラグ饅頭」を買って元気をつけた。
27日の開会式に出かけた。天候は晴れ、暖かい。51校のラガーマンの行進は色とりどりのジャージをきて、緑の芝生を敷き詰めたラグビー場に花が咲いたように美しく、すばらしかった。初日は開会式だけで帰った。28日の試合に備えるためであった。
初戦敗退
28日朝10時、第3グランドでキックオフ。朝から小雨が降った。荒尾対国学院栃木の試合に出かけた。前半は荒尾が押し気味に試合をすすめ、10:5で後半に入った。体格で国学院の選手が一回り大きく、雨のグランドでその体力差が出た。スクラム、モールを押しまくられ、劣勢を余儀なくされた。後半は逆に0:19、計10:24のダブルスコアー以上の点差で1回戦敗退となった。
うなだれる選手がグランドから出てくるのを待ち構えて、女房は選手の肩をたたいて励ます。多くの選手が「すみませんでした」と涙を流していた。監督と再会したが、「花園にくるだけの目標では勝てません。もっと高い目標を掲げないとダメです」と、悔しさをにじませていたそうだ。地元TVのインタビュー、関係者から携帯にひっきりなしに電話が入っていたので、再会は短時間で切り上げ、雨の中、撮影した奮戦ぶりを記念として監督に送り届けることで、わが家のラグビー応援は終わった。
●卓話(地球一周)
東大阪でモノづくりに取り組んでいるユニークな社長が主催するOYAJIサミットがある。社長と縁がある人が集まって交流する会で、とくに目的があるわけでもない。それなのに、いろいろな方が参加する肩のこらない会であることが、魅力である。
前回、参加の返事をしたのに、完全に忘れていて、迷惑をかけた。それで謝罪かたがた、会社に社長を訪ねた折に、私が参加するピースボートによる地球一周の話を肴に一献、傾けようということになった。
それほどおいしい肴でもないが、引き受けたしだいである。その日の様子を社長自ら書いたメールを送ってきた。以下に紹介したい。
「中さんより世界一周の船旅と紹介がありましたが、企画しているピースボートは商品の差別化するために、世界一周ではなく地球一周といっています。これは料金もイベント、オプショナルツアーもまるで違います」
2008年初旬から108日間の地球一周の旅に出かけられる経済ジャーナリストの岡田清治さんのスピーチが始まった。
12月15日、大阪上本町にある料亭「天繁」に、年齢は22歳〜66歳の老若男女29人が三々五々集合。在日8年の日本語堪能なベトナムの人やフリージャーナリスト、作家、営業マン、企業経営者、技術者、金融マン、税理士、経理屋、NGO,NPOの面々。
技術のジャンルでも光造形、精密金型、巻線技術、画像処理、シェーバの組立技術、携帯電話の組立技術、半導体装置組立技術、またネットワークもベトナムとの人材交流、人材派遣、京都の冬に観光客を集める企画者、まさに多士済々である。
大阪のみならず愛知県・常滑、滋賀、京都、奈良からやってきた。ジャズが流れる掘りごたつの席が時間とともに埋まっていく。
婚約前で結婚式の打合せの合間に彼女とともに顔を出した若者もいた。地球一周の旅の集いで一献といっても、日ごろクオータで業績を追われている人々にとっては絵空事だろうと思ったが、予想以上に人が集まった。皆さん結構「粋」ではないですか。
「長期の船旅で必要なものは、小金と時間。船医は内科のみだから歯科、眼科などは出航前に治すこと、また高齢の親族、介護者、病人、仕事、ペットがいると、難しい・・夫婦で行くとなればこれらの条件を満足させるのが非常に難しいです。特に、歯の治療は一度、かかるとなかなか開放してくれないので期日までに治療させるのが難儀です。
しかし、船旅は大型ダンボール7個に荷物を詰めれば、行き帰り宅配で処理してくれるので手ぶらでOK、後は上げ膳据え膳で船の中でゆったりと、老人にとっては結構いいものです」
父親である直木賞作家、元朝日新聞記者の岡田誠三さんが従軍記者として出向いたニューギニアでの散骨という大きな命題が地球一周の動機であった。目的地は大きな船が入港できないためにラバウルで散骨する。
今年入社したばかりのお嬢さんを乾杯の音頭に指名、「?」いつものOyajiサミットの無味乾燥な乾杯につき合わされている若者にとって青天の霹靂、なんで私がという思いである。ましてや自己紹介で元職が上場企業の社長や銀行の頭取、大手のエンジニア、総て私より偉いさん、当然言葉が出ない、補佐が付いてなんとか大役を果たす。補佐した営業マンの肩書きは「課長補佐」であった。私の主催の宴は若くても大役の一端を担ってもらう、大物の中での大役は「後々いい経験となる」からだ。
「かんぱーーい」岡田さんの船に乗せられ宴が上々の滑り出しで始まった。総てのテーブルにぱっと花が咲く、私の仕事が終わった。席を渡り歩く、どこでも興味深い話で盛り上がっている。生きるためのヒントがゴロゴロ転がっている。
中締めは、元頭取にお願いした。これが沢山の宴で大役を沢山こなした方だから、超ベテランが居並ぶ会でも締まるよどみない話術である。
伝承すべき日本の宴の形、本当に少なくなってきた。形式では組織は機能しない、技術も進歩しない、裃を脱いだ車座から先輩が持ち合わせている暗黙知を知ることができる。
次回は来春、横浜に入港した後、岡田さんと一献傾けよう、どちらが浦島太郎かみてみたい。過去にがんじがらめにされている若者には過去を清算し明日を夢見たこの船旅はいい刺激になるかもしれない。
セミプロ級の写真技術を駆使した地球の旅を見せていただきながら「岡田さん!お帰りなさい、ようこそ泥舟に」で一献の席を設けよう。会場はもう少し大きめにしておこう。
(12月17日)
モノ語り
11日は恒例の「さんぽう会」(3人の社長と我々3人の計6人の会合)を京都・「祇園にしむら」であった。この会は全員、割り勘で本音の話が聞けていつも楽しい。
話は多岐にわたったが、いくつか思い出すままに記録に留めておきたい。
赤福はおごりがあったのだろうという見方であった。1品で100億円の売上があれば、利益は笑いが止まらないはずだという。菓子は原料の産地表示は不要で、その点,他の生ものと違うという。全国に菓子屋が多く、それだけ圧力団体としても強いそうだ。
賞味期限もある意味、問題である。惣菜も原料産地の表示が義務付けられていないので、問題が多いはず。神戸のロックフィールドの岩田社長を3人の社長は大変、評価していたのが印象に残った。
祇園にしむらは東京吉兆で修行した板前が料理をしているそうだ。船場吉兆で毎年、懇談会を開いている、ある団体は女将から「半額にしますので、ぜひ」と、言われその気になったが、会の7割が反対したそうだ。「なにかのとばっちりで、困っているなら助けたいが、自らの不祥事では、行くことがはばかれる」という意見が多かったという。
朝日新聞夕刊の火曜日に「モノ語り」という企画欄がある。広く読者から「大切なモノ」を募集、取材して掲載している。取り上げられるモノはいろいろである。わが愚妻が黙って応募、忘れかけていたころに、記者から電話が入った。
「モノが地味なので、ダメかと思っていました」というと、記者は「文章を読んだ段階で、これはいいと思った」そうだ。11日夕刊に載った。
彼女が取り上げる題材に自分の母親が多い。姑(わが母)は決して登場しないのである。自分の母が世界一だと信じているからだそうある。まあ、ええ供養ができたと思う。ここに掲載紙を載せますので、興味ある方はお読みください。
日本国のかたち
日本は完全に官僚王国になっていることは、政治家自身も嘆いている。守山前事務j官の発言を聞いていても、政治家をなめきっている。これは明治以来、変わらないことだ。もちろん、なかには優れた官僚もいたが、システムが制度疲労起こしているため、国民の目から見て信じられないことが多過ぎる。
最近の例では、C型肝炎の薬害を救済するのに、政府の落ち度は誰の目にも明だが、福田首相は患者の数が多過ぎて、政治判断で迷っている。何を考えているのかと思う。テロ特措法にあれほど肩入れする前に、国民の命を守ることを優先させなければ、国のかたちをなさない。まして、インターフェロンで治療できることが分かっているのに、見捨てるのかと思うと、国民の一人として、がまんならないのは、私だけではないはずだ。
また、CO2問題、ガソリンの値上がりからインフレ到来が予測されるが、だいたい、日本をはじめ先進国ではモノが溢れるほど、生産されている。昔は、種類も少なく、選択するのもそう難しくなかったが、いまは大変な労力がいる。携帯をはじめ自動車でも何種類つくられているのか。個人のニーズを重視するマーケテイングで、同じ機能でも種類が過剰だ。
食材もあまりにも種類が多く、余っているため、偽装問題が続発する原因にもなっている。資本主義経済の破綻を予感する。環境問題は国民の目線で考えずに、企業の論理を優先させているところに、必ず咎めが起こる。
この国のかたちを変えるには、一度、民主党に政権を委ねたいと思っている人は確実に増えている。それによって、自民党も新しく甦り、もうすこしましな国になるのではないかと、最近、思っている。
地域主権型道州制
PHP総合研究所の江口克彦社長から近著『地域主権型道州制』を贈られました。一気に読める非常に分かりやすく、一読に値するないようだと思います。
内容は現在の日本の中央集権型国家は体制疲労を起こしており、このままでは崩壊すると警鐘を鳴らす力作です。江口社長へのお礼の手紙で、その内容の一端を紹介します。
「このたび、ご著書『地域主権型道州制』を贈っていただき、感謝しております。早速、拝読、感銘を受けました。内容につきましては、全面的に賛同します。こうした国のかたちが一日も早く実現することを切望します。
それにしても、さすがに情報が豊富で、とくに導入部の「20XX年」は、読者を引付けるすばらしい仕掛けだと感服しました。北海道洲の政策、とくに新千歳空港についての記述にはすばらしい発想を感じました。
江口さんも本の中で何回も指摘されていますように、中央集権国家の体制疲労は目に余るものがあります。日本の官僚はその権益を守るために、さらに知恵を働かせ、結局はダメな日本になるまで、改革と真剣に取り組まないように思えます。あまりにも国民の目線と違いすぎるように思います。それはわれわれ国民の責任でもあるのですが、虚無感が充満しているように思えてなりません。そうした中で、こうした提言が一人でも多くの国民の覚醒に役立つものと信じます。」
企業の価値
最近、二つの企業の話を聞いて思ったことを書いておきたい。1社は京都のローム、もう1社は西宮のコーナン・メディカルである。
ロームは技術本部長がある団体のサロンで「技術領域の壁を打破して」というテーマについて話したことであった。この人はパワーポインで、豊富な自前のデータを使って話した。大変、参考になった。
話のポイントはエレクトロニクスの業界は、総合化の道を歩んだところは、その利益率は低下の一途をたどっている。デバイスなど専門メーカーほど高い利益率を誇っていると指摘した。
その例として、ロームはもとより、マブチモーター、ヒロセ電機、キーエンス、海外のサムソン、デル、インテル、アップル、マイクロソフト等々、また京都の任天堂、村田製作所など京都企業をあげた。
日本は科学技術では世界第2位だが、総合力で24位だという。これはマネージメント力が欠落しているからだとという。これからの時代は異分野技術の融合によって複合デバイスを狙って、付加価値を上げる戦略が肝要だと強調した。
利益=(販売価格ーコスト)×数量
これまで日本の多くの企業はコストと数量にこだわった経営をしてきた。価格を10%下げると、数量は30%以上増やさないと、同じ利益が確保できない。今後は付加価値によって販売価格を上げる戦略をとらないと、利益がでない。コストと数量は台湾とかインドに任すべきだと主張。
コーナン・メディカルは取材で訪れた。同社は敗戦間もない昭和22年(1947年)7月、旧制甲南高校(現甲南大学)写真部有志6人が「使いやすさを夢」に創業、4年後に甲南カメラ研究所を立ち上げた。いろいろなカメラを試作した。やがてカメラの大衆化を迎え、大手メーカーの大量販売時代が到来。カメラから撤退、医療機器に特化して順調に推移している。
同社は50数人の従業員で、技術の壁は大学やそれぞれの専門メーカーと連携して開発、打破している。大手光学メーカーが投げ出した眼底撮影機を開発、それを機に医療機器に特化した戦略で利益率の高い企業に育てたようだ。
(感想)
この二つの企業は規模は大と小で違うが、戦略は同じに見える。つまりすべてを自前でやらないで、大学とかメーカーとの連携によって、多品種少量生産のスタイルをとっていることだ。従業員の数も徹底的に絞り、不足はアウトソーシングで補っている。
確かに利益率は高く株価も高いが、利益額になると、大手総合メーカーの足元に及ばない。しかも従業員数は圧倒的に違う。企業を利益率の指標でなく、社会的貢献度という尺度でみれば、利益率は低いが売上、利益の大きいところが圧倒している。その恩恵を受けているのが、専門メーカーだという見方もできる。
それぞれ企業には歴史があり、生い立ち、風土がある。一番大事なことは利益確保の結果をどう社会貢献するか、その使命観をもっているかどうかであろう。今回、二つの企業から学んだことである。(12月3日)
●あの名作『老人と海』を思い浮かべながら老人問題について書いたコラムです。ぜひ、お読みください。それにしても老人があふれてきているというのが実感です。
老人と人生旅
毎朝7時ごろ運動のため、生駒山(642m)の中腹まで散策している。山にやって来るほとんどが近所の60歳〜70歳代の老人たちである。集団ハイキングと違って男性のシングル組が圧倒的に多い。犬の散歩も多く、20歳の老犬(人間でいえば100歳以上)の腹に晒を巻いてリハビリのため毎日、公園までやってくる老人もいる。ここにも老老介護がある。朝の3時から登る老人は「家には悪魔がいる」と言って、通帳など全財産を入れたリックサックを背負っている。みんな元気に生きようと懸命である。
今秋、神戸港から日本一周のクルーズ豪華客船に乗る機会があった。日本の世界自然遺産(釧路・知床、白神山地、屋久島)と五島列島の4ヶ所をめぐる8泊9日の船旅である。途中、金沢港で乗船、下船する3泊4日組もいるが、乗客約400人に船長以下乗務員を入れると600人を超える大人数である。乗客の平均年齢は70歳を超えている。車椅子に乗っている老人や人工透析のカートを引っ張っている人たちも約10人はいる。
乗客のほとんどがシニア族である。1組の若いカップルは場違いのところに来た感がある。大半が老カップル、親子(それも母と娘が多い)、姉妹で、シングルは女性の常連組に多い。男女の比率はざっと3対7である。リピーターの乗客も多い。
「お元気ですね。よく船に乗られるのですか」「もう、何回も乗っています。日本にクルーズ客船がなかった時代は、外国船に乗っていました」「最近は、日本近海ですが・・。この前、世界一周してきました」「すごいですね。船旅がいいですか」「そらそうですよ。荷物を持たないのがいいですね。80歳を超えて、腰が曲がり、いつまでも元気でおれないので、今のうちに乗っておこうと思っています」
早朝、デッキでウーキングしながら交わした会話の一部である。船旅は食事や洗濯など、日常の雑務から解放されるので女性に人気がある。また、旅は船内で過ごす時間が全体の三分の二以上だから、各種のイベントが企画される。映画も毎日3回は上映され、夜はショウや演奏会が催される。夕食はフルコースで、女性はドレスアップして時間を過ごすことを楽しんでいる。
船内で旧知の中小企業の会長夫妻にお会いした。仕事一辺倒の会長は「退屈で時間をもてあましました。二度と乗船しません」と、あまり社交的でない性格もあって、このような狭い空間に閉じ込められる船旅はこりごりの様子だった。世界自然遺産を見学するといっても、限られた時間内では十分、満喫できない。しかも、屋久島でのオプションツアーで7時間のトレッキングには難業のためか、たったの二人しか参加しない状況であった。
ヘミングウエイの晩年の作品に『老人と海』がある。老漁師がカジキマグロを戦いながら捕獲、曳航して海岸にたどり着いたら、鮫に食い荒らされ骨だけが残っていたという人生の哀歓をおびた物語である。いま、老人たちの多くは、いつ途絶えるかも分からない残された人生の空白をカジキマグロの捕獲という冒険的なことまではいかなくとも、山登り、ボランティア活動、船旅などで埋める作業を懸命にしながら老後を送っている。老人たちに骨だけのカジキマグロのようなものしか残らなかったとしても、自分発見の人生旅そのものに意味があるとの思いで未知の終着駅を目指して懸命に生きている。
毎朝、山で会う散策する老人にも共通する、いつまでも動ける幸せがそこにはある。
月刊誌『商工会』12月号巻頭言
【目次】
◎老人と人生旅(11/30) ◎企業の価値(12月3日)
◎「地域主権型道州制」(12月6日) ◎(12月11日)
◎日本国のかたち ◎モノ語り(12月12日)◎卓話(12月17日)
◎ラグビー応援